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ポータブル電子機器のバッテリーパワーライン(Battery Power Rail)用カスタマイズ ESD/サージソリューション

2022/04/13

ポータブル電子機器のプリント基板設計の動向 --- 小さく、もっと小さく

IoTが日常生活にもたらした便利のおかげで電子機器の使用と持ち運びがさらに便利になったことを受けて、各製品の設計エンジニアはプリント基板の省スペース化と電子回路の高集積化をコンセプトにより完全な製品の機能が完成しました。普段見かける携帯電話、スマートウェアラブルデバイス、ワイヤレスイヤホン、電子タバコ、そして将来注目されるであろうARグラスも、0201サイズのパッケージ部品の使用が電子回路設計の主流になり、高い集積度を誇るSiP(System-in-Package)は既に実用化されています。


バッテリーパワーライン用ESD/サージ防護要件

使用者が電子機器の電源をオンにする際、パワーラインには常に電圧スパイクが発生します。もしくは使用者がバッテリーを分解する際、必ず電子機器のパワーラインを外部に暴露して静電気の妨害によって破損するリスクに晒されます。そのため、各製品のエンジニアが自社製品の設計を行う際、これらのサージ(ESD、サージ)に対する防護設計によって製品の信頼性を向上します。また、製品の製造段階でIEC 61000-4-2(静電気試験)およびIEC 61000-4-5(雷サージ試験)の試験を実行し、厳格なサージシミュレーション条件を設定して製品本体を使用者が使用する各環境に適応します。

  

図1:電源スイッチを入れる際に発生するスパイクの例

図1:電源スイッチを入れる際に発生するスパイクの例


国によって異なる気候環境に対して電子業界が直面する課題

各メーカーは、電子機器を他の国へ販売する際に現地の気候条件に適応すべく、厳しいテスト条件を設定して、使用者の使用環境で発生しうるサージタイプをシミュレーションします。典型例として、携帯電話製品は設計時に乾燥した気候や電力が不安定な環境の国へ販売することを考慮する必要があるため、設計テスト段階でパワーラインおよびUSB充電器のVbus(電源供給線)に対して条件の厳しいIEC 61000-4-5試験を実行して、厳しい環境の地域で製品の不良品やの返品修理の発生増加を防止します。高レベルのIEC61000-4-5試験に合格するため、製品エンジニアは、外部から侵入するESDやスパイクを防ぐためパワーラインおよびUSB充電器のVbusへのTVS設置を試みます。しかし、ポータブル電子機器はプリント基板の面積に制約を受け、市販されている小型パッケージのTVS部品はダイサイズの制限のため、高サージ電流に耐えることができません。そのため、製品設計エンジニアはより大きなパッケージのTVS部品で過酷なEOS(過電流ストレス)試験を合格することも考慮しますが、それはプリント基板面積の大きさかESD/サージへの高耐久度のいずれかを犠牲にしなければいけないことを意味しています。少ないプリント基板面積と高ESD/サージ耐久度を両立させる場合、常にエンジニアが製品設計する段階の難題になります。


デバイスバッテリーパワーライン用ESD/サージ保護  --- 設計事例

理想的なバッテリーパワーライン用TVSはサージ電流に対する高い耐久性だけではなく 、低バッテリー消耗(Power Consumption)で電子機器のバッテリーの持続時間を長くするためには、リーク電流(Leakage Current)が重要な指標となるパラメータになります。TVSが良好な保護性能を発揮するためには、クランプ電圧の低いTVSの選択することが重要です。こうして保護するチップが静電気によって破損せず、TVSが破損する状況が発生しませんが、ESDから防護するという目的も失われます。   


多くのエンジニアはバッテリーパワーライン用のTVS部品を選択する際、各バッテリーの電圧が不安定なため発生するTVSの誤作動を防止するため、VRWMがさらに高いTVSを選択して電圧のヘッドルームに余裕を確保します。但し、VRWMが高いプランはVBD (降伏電圧)とVclamp(クランプ電圧)が高くなることを意味し、規格設計においてヘッドルームを制御しながらTVSのクランプ電圧を良好に保つことは、常にエンジニアを悩ませます。   


最後はTVSの方向性です。バッテリーパワーラインは直流電圧であるため、マイナス方向の起動速度が速く、マイナス方向のクランプ電圧が良好な単方向TVSを選択してすることが理想的です。しかし、電子機器は大量生産の段階で早くから0201サイズの小型部品のSMT(表面実装)の両立の困難に遭遇するため、エンジニアは設計段階でリスクを防止すべく妥協して双方向TVSを採用します。また、このような発展動向のため、現在市販されている0201サイズの小型TVS部品は双方向部位品が市場の主流になっています。但し、近年は小型パッケージ部品が徐々に市場の主流となり、0201サイズなどの小型ショットキーバリアダイオードの需要のひっ迫によってSMTの量産技術が成熟化することで、プリント基板の方向性マーキングとIC用リールテープ、IC単体マーキングなど複数の要因が後押しして、小型部品のSMTの方向性の問題を克服しつつあります。多くのエンジニアがバッテリーパワーライン用TVSを選択する際、0201サイズの小型パッケージの単方向部品を必ず採用し、最高の防護効果を実現しています。

図2:単方向TVSのメリット --- 最適なマイナス方向のクランプ電圧

図2:単方向TVSのメリット --- 最適なマイナス方向のクランプ電圧


バッテリーパワーライン用ESD/サージ防護デバイスの設計における重点は以下のとおり整理できます。

Characteristic
Description
VRWM
A little higher than voltage of power rail for safety margin
Directivity
Uni-directional for optimized negative clamping voltage
Leakage Current
Low leakage current for low power consumption
ESD Clamping Voltage
Low clamping voltage for efficient protection
Surge Ipp (8/20µs)
High Surge robustness for low field return rate
ESD IEC61000-4-2
High ESD robustness for most of strict test criteria
Package Size
Small package for compact device


驚くほど最適化したバッテリーパワーライン用ESD 防護ソリューション--- AZ5A16-01M

上記を踏まえて晶焱科技がバッテリーパワーライン用に設計開発した最適なTVS ソリューション 「AZ5A16-01M」の規格概要は以下のとおりです。 

 ‧パッケージ: MCSP0603P2Y (0201) 

 ‧方向性: 単方向 ‧ピーク逆動作電圧: 6V 

 ‧8kV時点のESDクランプ電圧: 9V 

 ‧システムレベルの ESD 耐性(IEC61000-4-2): 30kV 

 ‧サージ Ipp (8/20µs): 20A  

 ‧逆方向リーク電流: < 100nA


AZ5A16-01Mは、4.5Vや5Vなどのバッテリーパワーラインのヘッドルームを確保するだけでなく、低逆リーク特性により、バッテリーの寿命を向上させることが可能です。この2つのメリットを維持しながら高いVRWMを備え、クランプ電圧の特性が失われていません。AZ5A16-01Mは、現在市販されている0201サイズの単方向5V - 6VのTVS製品に比べ、クランプ電圧が低く、その単方向性により最適な負極性保護を実現しています。


図3:AZ5A16-01M のTLPグラフ --- ESD クランプ電圧
図4:AZ5A16-01Mのサージクランプ電圧

図3:AZ5A16-01M のTLPグラフ --- ESD クランプ電圧

図4:AZ5A16-01Mのサージクランプ電圧


また、AZ5A16-01Mは小型ポータブル機器のプリント基板面積計画に柔軟性を持たせるべく、小型パッケージのMCSP0603P2Yを採用し、バッテリーパワーラインが高仕様のIEC61000-4-5の電気的オーバーストレス(EOS)試験に合格できるよう、業界最高レベルの最大20A(8/20μs)のサージ耐性を備えています。この規格により、エンジニアは小型パッケージと高いサージ耐性を両立させる設計が可能となり、プリント基板面積の小ささとサージ耐性のトレードオフを解消することができます。


図5:AZ5A16-01M パッケージ & ピン設計

図5:AZ5A16-01M パッケージ & ピン設計


そして、AZ5A16-01MはMCSP特殊パッケージを採用し、従来のCSPパッケージと同様にウェーハレベルパッケージでありながら、6面のコーティング層によりパッケージ構造とSMT推力を強化し、小型パッケージの利点を持ちながらメーカーの厳しいSMT推力テスト仕様に対応できるよう設計されています。


図6:MCSPのパッケージ構造

図6:MCSPのパッケージ構造

        

AZ5A16-01Mのバッテリーパワーラインの各仕様に合わせた特別設計により、市場でますます普及しているIoTウェアラブルデバイスのシステムレベルのESD耐性を強化し、EOSが原因の損傷による不良返品を防止するとともに、バッテリー寿命やコンパクトデバイスのプリント基板設計要件も両立しているため、製品エンジニアが設計段階で遭遇するジレンマを解消し、市場投入までの時間を短縮させることが可能です。

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