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産業用PC 2.5GbpsイーサネットESD/EOS 保護ソリューション

2023/03/08

産業用PC(Industrial PC)は一般のコンシューマPCと比べて、アーキテクチャはおおよそ同一ですが、CPUの大半は、X86(Intel以及AMD)が主流です。しかし、産業用PCで主に求められる安定性、互換性、拡張性ゆえに、I/Oポートの通信速度要件の向上はコンシューマPCより緩和されています。但し、産業用PCが使用される環境は一般的なコンシューマPCよりも過酷(例:工場、鉄道、船舶…など)であるため、システム本体の信頼性、寿命、外部からの干渉への抵抗力がより重要性を増しています。そのため、設計時はESD/サージによるI/Oポートの故障を防止すべく、I/OポートのESD/サージに対する保護が特に重要です。 


最近IPCチップの参考設計において、イーサネットポートの通信速度が1Gbpsから2.5Gbpsまで上昇しています。各大手産業用PCメーカーは新プロジェクトの研究開発において、通信速度2.5Gbpsのイーサネットを標準設計としているため、ESDまたはサージのテストを行う場合、2.5GbpsのチップがESD/サージに対して影響を受けやすく、試験に合格できないという問題が発生します。本書ではイーサネット 2.5GbpsにおけるESD/サージへの完全な保護対策について説明します。 


イーサネット 2.5Gbpsは主に4組の差動ペア配線で構成され、差動ペア配線の通信速度は約625Mbpsであるゆえ、通信エラー防止のためにESD/サージ保護ダイオードの電容量も相対的に高くすることができません。イーサネットのサージ試験を行う際、コモンモード(線対地)と差動モード(線対線)の2種類のモードで試験を行い、コモンモードの ESD/サージ試験は4チャネルのTVS Array保護ダイオードに対して、DFN2510P10EパッケージのAZ1213-04Fの利用を推奨します。パッケージの特徴の関係で、プリント基板は直線でTVS Arrayを通過し配置することができるため、設計の際に便利です。AZ1213-04F 通信の対地における寄生容量は2.1pF(Typ.)でありIEC61000-4-5 サージ(8/20μs) 20Aの電力に耐えられます。サージ(8/20μs) 20Aの場合はサージのクランプ電圧が7.5Vであり、ESD のクランプ電圧は16A(ESD=8kV)の場合、6.5Vになります 。(図1. AZ1213-04Fのサージのクランプ電圧とTLP I-V特性曲線を参照)

図1. AZ1213-04Fのサージのクランプ電圧とTLP I-V特性曲線を参照
図1. AZ1213-04Fのサージのクランプ電圧とTLP I-V特性曲線を参照

図1. AZ1213-04Fのサージのクランプ電圧とTLP I-V特性曲線を参照


差動モード(線対線)のサージ保護ダイオードにおいてはDFN0603P2Y(0201)パッケージのAZ5B0S-01Fを推奨します。寄生容量は0.18pF(Typ.)でありIEC61000-4-5 サージ (8/20μs) 7Aの電力に耐えられます。サージ(8/20μs) 7Aの場合はサージのクランプ電圧が4Vです(図2. AZ5B0S-01Fのサージのクランプ電圧のTLP I-V特性曲線を参照)

図2. AZ5B0S-01Fのサージクランプ電圧のTLP I-V特性曲線

図2. AZ5B0S-01Fのサージクランプ電圧のTLP I-V特性曲線


差動モードのサージ保護ダイオードは上記のAZ5B0S-01F以外に、DFN1006P2E(0402)パッケージの保護ダイオードAZ522S-01Fを推奨します。寄生容量は0.2pF(Typ.)でありIEC61000-4-5 サージ (8/20μs) 6.5Aの電力に耐えられます。サージ(8/20μs) 6.5Aの場合はサージのクランプ電圧が5Vです(図3. AZ522S-01Fのサージのクランプ電圧のI-V特性曲線を参照)

図3. AZ522S-01Fのサージのクランプ電圧のI-V特性曲線

図3. AZ522S-01Fのサージのクランプ電圧のI-V特性曲線



コモンモード(線対地)と差動モード(線対線)の保護ダイオード以外に、システムでESDおよびサージの試験を行う場合、LED制御信号に電力がカップリングされ、LAN PHYが損壊する問題もよく発生します。そのため、LAN LED制御信号ケーブルの保護も非常に重要であり、LED制御信号ケーブル上に保護ダイオードを事前に設置することを推奨します。(2.5Gbps イーサネットの保護ソリューションは図4を参照)。

図4. 2.5Gbps イーサネット ESD/EOS保護回路

図4. 2.5Gbps イーサネット ESD/EOS保護回路


上記で説明の通り、産業用PCは比較的過酷な環境で使用するため、システムの回路設計の初期段階において、ESD/サージの保護ソリューションで2.5Gbps イーサネットのポートの耐久性を強化して、市場流通後にポートがESD/サージによって使用不可能になる問題発生を回避することができます。

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