5G、ビッグデータ、AIなどの技術の急速な進歩と次々と導入される新技術によって、各分野における技術のスマート化の重要性がますます高まっています。特に自動車分野は、人々の生活と密接に関わっている製品のため、自動車の新技術の進化はスマート化を加速して、私たちの生活すら変えてしまいます。
スマートカーの重要な構成要素の一つがADAS(先進運転支援システム )であり、車載カメラと車内の埋め込み式モニターがADASのハードウェアの基礎になります。360°モニター、車内HD中央制御メーターの普及に伴って、音声・映像データの伝送速度と安定性への要求が更に高まっています。FPD-Link規格、GMSL規格のような通信バスが現時点で最適なソリューションです。両者は構造上非常に似ています。ここではTI企業のFPD-Linkを例にすると、推奨するESD防護ソリューションもマキシム・インテグレーテッド (Maxim)社製GMSL規格通信バスを適用できます。
FPD-Link はテキサス・インスツルメンス社が発売しました。LVDS 規格に基づく第 1 世代は、1ペアのツイストペアケーブルを使用していますので、音声・映像データを 350M bpsの速さで伝送できます。その後のFPD-LinkⅡはLVDS規格からCML(Current Mode Logic)規格に変換され、1つの差動ペアのみで1.8G bpsの伝送レートを実現します。現在、最新のFPD-LinkⅢは、映像信号や音声信号のみならず、制御信号も差動ペアで伝送することができ、伝送速度は最高4G bps、FPD-LinkⅢはPOC(Power-over-Coax)に対応しています。高速の音声・映像データと制御信号を送信する一方で、電力も送信する必要があるため、動作中のシステムの安定性に非常に高い要件が課されます。FPD-Link Ⅳも現在開発中で、伝送速度がさらに向上する可能性がありますが、今後、ESDやEMCはより厳しい課題に直面すると推測されています。
FPD-LinkⅢ対応の2種類のモード:①シングルエンドモード、②差分モード。
1本の同軸ケーブルで構成されるシングルエンドモードは、同軸ケーブルで12Vの電力を伝送でき、信号伝送速度は最速4G bpsに達します。このモードは、音声データと映像データ、制御信号、および電源を長いケーブルに統合できるため、ケーブル コストを大幅に削減できます。主に車載カメラで利用されています。
2 ペアの差動ケーブルで構成される差動モードは、主に高解像度の音声データと映像データの伝送に利用されます。高い伝送速度が要求されるため、ケーブルは一般的にそれほど長くなく、主に車内HD中央制御ディスプレイで使用されます。

図1:FPD-LinkⅢの構造図
シングルエンドモードでも差分モードでも、高速な信号伝送技術する必要があり、車内の複雑な電磁環境では、伝送されるデータが干渉されないようにすることや、電源が安定していることが非常に重要です。車載システムの安定性に対する要求がさらに高くなるにつれて、ESD および EOS 防護に対する要件も厳しくなっています。車両システムの ESD および EOS 保護規格で対応している主な国際規格は、ISO10605、ISO7637、ISO16750 です。
規格 | 試験種類 |
ISO10605 | ESD |
ISO7637 | EOS |
ISO16750 |
EOS |
表1:ISO規格とテストモード
ISO10605規格は消費者用電子機器用ESD試験規格IEC61000-4-2とは異なり、150pF/330Ω、150pF/2000Ω、330pF/330Ω、330pF/2000Ωの4つの試験方法があり、状況はより複雑になっています。保護部品であるTVSについても、車載システムの高信頼性要件を満たすためにはAEC-Q101 の認証が必要です。晶焱科技(Amazing)の車載TVSは、優れた防護性能を発揮し、AEC-Q101規格認証を取得しています。お客様のニーズに耳を傾け、新製品を続々と投入しています。
FPD-LinkⅢシングルエンドモードによるESD防護の場合、推奨されるTVSパラメータはCj≤0.5pF、Vbr(降伏電圧)≥13.2Vを満たす必要があります。晶焱科技のAZ9817-01Fは、Cj=0.4pF(typ. )のため、高速信号の伝送には影響しません。これは、システムが ESD テスト中に良好な安定性を維持しているということができます (クランプ電圧曲線は図2に表示)。しかも、AZ9817-01Fのパッケージは DFN1006 (0402) のみであり、PCB面積を節約できます。 現在、一部の顧客がより高いDC耐電圧規格を求めていますので、この用途ではCj≦0.5pF、Vbr≧1.1*VDCの規格を参考にTVS規格を選択することを推奨します。
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図2:AZ9817-01F ESDクランプ電圧曲線(TLP測定)
FPD-LinkⅢを差動モードで利用する場合、超低容量のTVSを使用する必要があります。この場合、AZ9143-04Fなどの統合TVS、パッケージは DFN2510 です。このパッケージは、ストレートレイアウトに対応していますので、差動ペアに最適な配線です。注意すべきはAZ9143-04F が AC 絶縁コンデンサの後に配置が必要なことであり、この TVS の Cj = 0.45pF (Typ.)では図 3のような USB3.1 10G-bps 信号を使用したアイパターンテスト結果を示しているため、FPD-LinkⅢの信号伝送にほとんど影響しません。また、ESD クランプ効果は非常に優れており (図 4 に表示)、外部から強いESD エネルギーが入ってくる場合でも、バックエンドチップを損傷から防護することができます。これは国内トップのパネルメーカーの顧客の案件で検証済みです。現在、一部の顧客が TVS をコネクタ側に直接配置することを提案しています。TVS の推奨規格は、Cj≦0.5pF、Vbr≧1.1*VDC の規格を参照しています。

図3:10Gbps の差動ペア時のAZ9143-04Fのアイパターン
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