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ESD試験: TLP測定のメリットとHBM、IEC61000-4-2との相違点。

2020/08/10

なぜ静電破壊試験を実施すべきか?

研究開発エンジニアが新しい電子製品の開発に成功した場合、量産前に多くの試験に合格する必要があります。そのうち、HBMとIEC61000-4-2の試験規格は比較的知名度が高いですが、近年は各メーカーが相次いでTLP測定(Transmission Line Pulse Test)の実施を指定しています。たとえ試験方法が異なる場合でも、最終目的はいずれも電子製品の信頼性の確保です。出荷前にやや厳しいESD試験で電子製品の品質を管理しますが、その適用可能範囲は比較的広いです。湿潤な気候の国も、乾燥気候または寒冷気候で静電気が発生しやすい地域も、環境の影響を受けにくく消費者の利用体験が一体化しやすくなり、こうして消費者のブランドに対する信頼感が高まります。


HBM(コンポーネント)とIEC61000-4-2(システム)

HBMは人体から半導体コンポーネントに静電気が放電された場合を模擬した試験です(放電方式と波形は 静電気保護の重要性を参考)。現在、半導体産業では出荷時にほぼHBMのテストを合格済みです。次のシステム組立完成後にIEC61000-4-2によるシステムレベルでのESDを実施します。IEC61000-4-2におけるESDのRとCの値はそれぞれ150pF、330Ω、HBMはそれぞれ 100pF,1500Ωです。このことからIEC61000-4-2のシステムレベルの試験は充電の電容量が大きくて放電抵抗が小さく、さらに、ここで計算されるテスト電流がHBMと比べて約5倍であることがわかります。このことからIC出荷時にHBM試験を合格しても、システム組立後、IEC61000-4-2の試験を合格するために、特別なESD保護ダイオード(TVS製品)が必要になります。


TLP測定(Transmission Line Pulse Test)

TLP測定とHBM、IEC61000-4-2はいずれもESDの状態をシミュレーションするためのものです。ESDガンを使用した試験と比べると、合格(Pass)または不合格(Fail)の試験結果しかわかりませんが、TLP測定はESDシミュレーションを低電流から高電流まで都度実施でき、各放電時にDUT(テスト対象デバイス)両端の電圧と電流を同時に測定して、測定から得られるTLP特性曲線グラフはTVSがESDに遭遇時のI-V特性とクランプ電圧(Clamping Voltage)をより詳しく把握できます。クランプ電圧はTVSがESDの衝撃を受けた際に測定可能な使用電圧であるため、クランプ電圧が小さくなるほどTVSがDUTのESD試験を合格しやすくなります。また、メインチップとTVSのクランプ電圧との関係をさらに比較できるようになり、ここでTVSがESDエネルギーによるメインチップの破壊から保護できるかを予測できるなら、ESD保護ダイオードの最も指標性の高いパラメータになります。  


TLP測定はどのように役立つ?

モノリシック[長尾1] TVSの場合、対応するESD電流におけるTVSのクランプ電圧は、TLP測定後に得られるグラフからすぐ確認することができます。クランプ電圧の小さいTVSは保護性能に優れ、システムはIEC61000-4-2の試験を合格する可能性が高くなります。そのため、TLPグラフによって私たちはTVSがシステムのESD防護要件を満たしてIEC61000-4-2の静電気破壊試験を合格できるか推測することができます。


AZ5413-01FのTLP曲線グラフ: TVSが16AのESD電流を受ける際、そのクランプ電圧は8.5Vであることがわかります。

AZ5413-01FのTLP曲線グラフ: TVSが16AのESD電流を受ける際、そのクランプ電圧は8.5Vであることがわかります。


システム製品では、IEC61000-4-2のESDガン試験はESD耐性をすぐ確認することができ、TLP測定は破損点の電圧をしっかり把握することができます。私たちは、システムのメインチップでTLPテストを実行できますので、ESDエネルギー下でのメインチップのクランプ電圧を測定して、TVSのTLPグラフに対応できます。これによって多くの製品の研究開発エンジニアが設計段階において、余分なトライアンドエラーと時間コストを削減できます。これも近年多くのメーカーが相次いでTLP測定を導入して、自社製品に対してESD試験を実施している理由になっています。


下のグラフはNotebook USB 3.1 ポートに対してTVSがある場合とない場合のTLP測定グラフの対比です。


下のグラフはNotebook USB 3.1 ポートに対してTVSがある場合とない場合のTLP測定グラフの対比です。

メインチップはESD電流が3.1Aのエネルギーの場合、クランプ電圧が11.1Vであることがわかるため、私たちはクランプ電圧がより低いTVSを選択する必要があります。 

 このグラフからわかること: システムのI/O ポートにTVSを加えた後、システムは受けるESD電流が大きくなっても、クランプ電圧をより小さく保つことができます。


TLP測定の実例

1)        ESD試験の要件は、デスクトップのオーディオ・ポートに対して8kVの接触放電を実施。 対象となる3つのTVS製品のTLPグラフは以下の通りです。


ESD試験: TLP測定のメリットとHBM、IEC61000-4-2との相違点。


TVS取付後、IEC61000-4-2 ESDの実際の測定結果は以下の通りです。

TVS取付後、IEC61000-4-2 ESDの実際の測定結果は以下の通りです。

この結果からクランプ電圧が比較的小さいTVSは比較的高レベルのESD試験を合格できる可能性があることがわかります。 TVSのクランプ電圧の比較から、IEC61000-4-2の試験結果を予測することができます。


2)        Notebook HDMIポートに対してTVSがある場合とない場合のTLP測定グラフの対比です。

2)        Notebook HDMIポートに対してTVSがある場合とない場合のTLP測定グラフの対比です。


このグラフから、HDMIポートにTVSを追加すると、システムのTLP曲線がTVS曲線に従うため、システムはより高いESD電流に耐えることができ、より低いクランプ電圧(Clamping Voltage)を示すこともわかります。これは、ESD耐性が優れており、ESD試験に合格したことを意味します。


TLP測定の結果解析

システムでTLP測定を実行する際、TVSのクランプ電圧が十分に低くないと、TVSの状態は合格(Pass)ですが、後部のICが損傷して試験が不合格(Fail)になることがよくあります。これはTVSを選択するときに、TVSのESD保護機能を考慮する場合、モノリシックTVSのESD耐性ではなく、クランプ電圧(Clamping Voltage)が十分に低いことに最初に注意する必要があることも示しています。このようにして、保護されたコンポーネントが不合格(Fail)になることと同時に、TVSが損傷を受けていない状態では、ESD保護ダイオードを追加する目的も失われます。TLP特性曲線図と組み合わせて適切なTVS製品を選択する際、電気回路内でやや高価なメインチップがESDで破損されることを防止しながら、製品の信頼感を向上して製造後の返品や修理の可能性が減ることで、以降電気回路設計の調整に余分なコストを費やすことを防止します。

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