有機LED (Organic Light-Emitting Diode)とは有機発光ダイオードを持つ多層構造のEL部品です。従来のLCD (Liquid Crystal Display)と比較すると、液晶とバックライトモジュールを利用したイメージングの原理ですが、有機LEDディスプレイモジュールは独自の電源供給による自家発光の原理と構造で設計されており、これによって薄型化、高明度、低消費電力、反応速度上昇、高解像度、高フレキシブル性、高発光効率などのメリットを兼ね備え、消費者のディスプレイ技術に対する様々な要望に応えることができます。現在、有機LEDディスプレイモジュールは既に、工業用自動化設備、医療機器、コンシューマーエレクトロニクス(スマートフォンやタブレット、スマートウォッチ、ノートパソコン、VR機器)などの各業界で従来のLEDに代わって幅広く利用されています。
各自動車メーカーも同様に、電気自動車の急速な発展に伴い、自動車の性能を向上しながら、新しい有機LEDディスプレイ装置を多く取り入れてユーザーのドライビング体験を向上しています。例えば、ディスプレイ装置については2K、時には4Kもの高解像度ディスプレイを使用し、車載システム用のメーター、中央制御、エンターテインメントの3連表示モジュールなどの新設計では、使用するディスプレイパネルにも徐々に有機LEDモジュールが使用されるようになり、解像度が大幅に向上しています。車載ディスプレイモジュールの通信プロトコルにおいて、最も使用されているのがLVDS (Low-Voltage Differential Signaling)とeDP (Embedded Display Port)のプロトコルです。従来のLVDS通信プロトコルと比べて、eDP通信プロトコルは高速シングルパス、低消耗電力、EMI(電波障害)の影響が小さい、データ通信障害に強いなどのメリットがあり、LEDディスプレイモジュールとサーバー間の通信速度向上に広く利用されています。

図1. eDP通信プロトコル構造
eDP通信プロトコルが規定するデータ通信は主に、高速リンク、AUX(補助)信号、ホットプラグ(HPD)信号の3つに分かれます。高速リンクは1~4組の作動信号通信に対応し、データの主要通信チャネルになっています。現在、eDP通信プロトコルで最も使用されているバージョンはV1.4であり、シングルリンクの最大通信速度は5.4Gbpsです。最新のeDP 1.5プロトコルのシングルリンクの最大通信速度は8.1Gbpsに達しています。また、設備通信検知、設備制御信号通信などの機能を利用できます。
有機LEDディスプレイモジュールの安定性を確保するため、メーカーは通常、自社製造のディスプレイモジュールに対して模擬ESDテストを実施します。商用グレードではディスプレイモジュールは一般的に接触放電8kV、気中放電15kVの条件で試験を行いますが、車載システムの要件が厳格化していることを受けて、ESD試験の要件が接触放電、気中放電15kVまで厳格化しています。試験結果は多くがClass BからClass Aへ格上げされ、試験中にディスプレイの点滅が再び起こることはありませんでした。この厳しい試験条件下で、モジュールに対するTVS保護ソリューションは徹底的に実行する必要があります。もちろん、有機LEDモジュールのTVS保護ソリューション設計について、eDPインターフェースの各ケーブルに対して保護を行うだけではなく、タッチパネルSPI信号および各電源信号に対しても保護を行って各グレードのICがESD試験の影響を受けずにESD模擬試験を確実に合格する必要があります。
eDPインターフェースの保護において、高速リンクの通信速度が速く、TVSを選択する際、キャパシタンスが高すぎないか配慮し、同時に高速信号はESDの妨害を受けやすいため、クランプ電圧がより小さいTVS製品を選ぶことで初めて信号保護が改善されます。中央制御ディプレイモジュールは車載用の前装部品に該当し、メーカーは部品選択の際に常にTVSがAEC-Q101車載規格の認証に合格していることを求めています。晶焱科技のAZ9シリーズは全ての部品がAEC-Q101車載規格に合格しています。eDP高速リンク(Main Link)は低キャパシタンスで4チャネルのAZ9143-04Fまたは8チャネルのAZ9143-08FをESDおよびEOSの保護に利用して、マルチチャネルDFNパッケージレイアウトはシンプルで障害物に穴を開けたり迂回する必要もありませんので、EMIを減らして保護効果を高められます。補助通信 (AUX)はダブルチャネルAZ9515-02FをESDおよびEOSの保護に利用すれば、低速ケーブル保護として最もコストパフォーマンスが高い製品になります。また、タッチパネルICのSPI通信ラインは4チャネルのAZ9143-04Fまたは2チャネルのAZ9515-02FでESDおよびEOSの保護を行うことができます。
部品No. |
パッケージ |
キャパシタンス (pF) | VRWM (V) | VBV (V) | チャンネル | VCL_ESD @8kV(V) | 気中放電 (kV) | 接触放電 (kV) |
AZ9143-04F |
DFN2510P10E (2.5x 1.0x 0.5) |
0.45 | 3.3 | 4.5 | 4 | 9 | 15 | 15 |
AZ9143-08F | DFN3810P9E (3.8x 1.0x 0.5) | 0.5 | 3.3 | 4.5 | 8 | 9 | 15 | 12 |
AZ9515-02F | DFN1006P3X (1.0x 0.6x 0.5) | 0.8 | 5 | 6 | 2 | 10.7 | 18 | 18 |
表1 信号ラインのTVS保護の基本パラメータ
有機LEDディスプレイモジュールの保護設計が改善でない場合、試験中常にブラックスクリーンや再起動などの現象が発生します。ESDまたはEOSが信号ラインを妨害するほか、各種チップ電源やドライバー電源の干渉も原因となります。ディスプレイモジュールの各種チップやその他の部品に深刻なダメージを与え、さらにはお客様の返品率を高めることも少なくないため、電源ラインに対してESD保護だけでなく、EOS保護も重要です。車載用有機ELディスプレイモジュールに使用されるTVS保護素子は、電源ラインの数が多く、プリント基板のサイズが小さいため、0402や0603サイズが主流です。TVS製品のIPP電流が大きいほど、またクランプ電圧が低いほど、EOS保護効果は高くなり、有機ELディスプレイモジュール全体のESDおよびEOS耐性は強くなります。
有機LEDモジュール内で保護が必要な電源ラインは多いです。例えば、PMICのVDD 1.8Vの低電圧電源について、晶焱科技は優れた保護機能を持つ超低動作電圧・低クランプ電圧製品であるAZ9625-01Fの使用を推奨しています。また、保護が必要な電源ラインはVDD_3.3V,AVDD,DVDD,VGH/VGL,VINなど様々です。同じ動作電圧のTVS製品の利用をおすすめします。
部品No. |
パッケージ |
VRWM (V) | VBV (V) | VCL_ESD @8kV (V) | VCL_surge @5A (V) | 気中放電 (kV) | 接触放電 (kV) | IPP (A) |
AZ9625-01F |
DFN1006P2E (1.0x 0.6x 0.5) |
2.5 | 3.5 | 5 | 4.3 | 30 | 30 | 20 |
AZ9523-01F | DFN1006P2X (1.0x 0.6x 0.45) | 3.3 | 4 | 7 | N/A | 16 | 16 | N/A |
AZ9585-01F | DFN1006P2E (1.0x 0.6x 0.45) | 5 | 6 | 6.5 | 6 | 25 | 25 | 15 |
AZ9808-01F | DFN1006P2X (1.0x 0.6x 0.45) | 8 | 9 | 15.5 | N/A | 30 | 30 | N/A |
AZ9812-01F | DFN1006P2X (1.0x 0.6x 0.45) | 12 | 13.5 | 17 | N/A | 16 | 16 | N/A |
AZ9313-01F | DFN1610P2E (1.6x 1.0x 0.5) | 3.3 | 4 | 4.8 | 5.4 | 30 | 30 | 70 |
AZ9315-01F | DFN1610P2E (1.6x 1.0x 0.5) | 5 | 6 | 6 | 6.5 | 30 | 30 | 60 |
AZ9707-01F | DFN1610P2E (1.6x 1.0x 0.5) | 7 | 7.8 | 9.0 | 8.5 | 30 | 30 | 45 |
AZ9710-01F | DFN1610P2E (1.6x 1.0x 0.5) | 10 | 11.2 | 12.7 | 12.3 | 30 | 30 | 32 |
AZ9712-01F | DFN1610P2E (1.6x 1.0x 0.5) | 12 | 13.3 | 15 | 14.5 | 30 | 30 | 25 |
Table 2. Basic parameters of power line protection TVS
完璧なESDおよびEOS保護設計は、製品の性能に影響を与えず、製品の返品を減らすための最も重要な対策です。晶焱科技の多様な製品と豊富な設計経験により、最終製品の設計に対してより包括的なESDおよびEOS保護ソリューションを提供することができます。
参照URL : https://vesa.org/